【サッカー】19年W杯、20年東京五輪へ。新生なでしこのベースはできあがった

熊本地震復興支援マッチとして行なわれたキリンチャレンジカップで、コスタリカと対戦したなでしこジャパン高倉麻子監督が就任して1年、初の国内での国際試合で3-0の完封勝利をおさめた。

 先月のアルガルベカップから6名を入れ替え、招集した22名(京川舞がケガにより途中離脱)からスタメンを勝ち取ったのは、GK池田咲紀子(浦和レッズL)、DF高木ひかり(ノジマステラ)、熊谷紗季(リヨン)、市瀬菜々(ベガルタ仙台L)、宇津木瑠美(シアトル)、MF中島依美INAC)、阪口夢穂、中里優、長谷川唯(いずれも日テレ・ベレーザ)、2トップは横山久美(AC長野)、田中美南日テレ・ベレーザ)という面々。

 アルガルベカップからの変化はキックオフ直後から現れた。中里からのパスを受けた中島がいきなりバイタルエリアで仕掛け、さらに中島が中へ切り込むことで生まれるサイド奥のスペースに、右サイドバックの高木が駆け上がる。アルガルベカップでは迷いが生じ、自信を失いかけていた中島が新たな切り口を見出そうとしていた。高木も同じく、何とか攻撃に絡もうとサイドバックのポジション取りを、ゲーム中も熊谷と常に話し合って模索する。

「実は昨日の直前練習があんまりよくなくて……。高い位置を取って、そこからボールを配給したり、積極的に仕掛けていけと言われていたので、(試合のなかで)高い位置を取ったら(中島)依美さんが中に落ちて、そこでフリーで前を向く形を作れました」(高木)

 ここ数試合は左サイドの長谷川の活躍でなかなか攻撃面に絡めずにいた右サイドが、ようやく活性化してきた。

 そんな中、高木のパスから生まれた先制点は横山の個のプレーが際立つものだった。パスを受けた横山は右足のタッチでDFをかわす。一瞬、わずかに引っかかるような動きを見せた。「シュートを打つか迷った」という横山のその一瞬の動きで相手DFの重心は左にブレ、その隙に横山はすかさず左足を振り抜いた。ボールの軌道を確認した横山が渾身のガッツポーズ。ここまで3試合連続ゴールだ。

 本人は常に複数ゴールをイメージしているため満足げではなかったが、アルガルベカップでは全試合で得点シーンに絡み、2度の先制点、日本唯一のゴールなど、重要な結果を残している。今後厳しいマークも予想されるが、ここからが横山の正念場になるだろう。

 1点をリードした後半は、交代して入った若い力が躍動した。ゴールまであと一歩のところまで攻め入るも、なかなかゴールを奪えずにいた田中の待望のゴールを演出したのは、昨年のFIFA U-20女子ワールドカップの得点王・上野真実(愛媛FC)だった。

 2トップの一角に入った166cmの上野は、左サイドへ流れて長谷川からのパスを受け、チラリとゴール前に目をやると、グラウンダーのボールを一気にDF裏へ蹴り込む。そこへ走り込んだ田中がきっちり合わせた。FW陣の中では長身の上野はポストプレーを得意とするが、足元の技術もかなり高い。何より彼女が持つゴール嗅覚がなでしこジャパンでも十分に通用するレベルにあることが証明された。これで、またひとつ前線にオプションを加えることができそうだ。

 今回は対戦相手のコスタリカがそこまでハードなプレスをかけてくる相手ではなかったからこそ、ここまでイニシアチブを取ることができたともいえる。それでも、このチームにとって成功体験は大切だ。さらに、ケガ人続出で両サイドバックが手薄であることや、メンバーを固定できない状況下で、もがいてきたからこそ見えた形もある。

「やろうとしていること、やるべきことは練習中もずっと監督からも伝えてもらっているし、自分たちも意識して取り組もうとしている。アメリカ、スウェーデンへの遠征、アルガルベカップと、今日の親善試合を重ねていく中でチームとして少しずつ形になってきているところはある」とは熊谷は言う。